PFASの基準値を海外と比べる:日本・アメリカ・EU・WHO
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PFAS(ピーファス)は、有機フッ素化合物という化学物質のグループの呼び名です。PFOS(ピーフォス)とPFOA(ピーフォア)は、その中の代表的な2種類です。
日本の水道水の基準は、PFOSとPFOAの合計で50 ng/Lです。
アメリカの基準は、PFOSとPFOAそれぞれ4 ng/Lです。
ただし、国によって、対象の物質の数や、守る義務があるかどうかが違います。
このページでは、各国の政府や国際機関の資料で確かめた数字を並べます。
ng/L(ナノグラム・パー・リットル)は、水1リットルにふくまれる量です。1ナノグラムは、1グラムの10億分の1です。
日本の基準は、ほかの国と比べてどうか
日本の50 ng/L(PFOSとPFOAの合計)は、アメリカ(それぞれ4 ng/L)やデンマーク(4種類の合計で2 ng/L)より大きい数字です。EU全体の基準(20種類の合計で100 ng/L)よりは小さい数字です。WHO(世界保健機関)は、まだ正式な値を決めていません。
ただ、数字の大きさだけでは比べられません。
国ごとに、合計する物質の種類と数が違います。守る義務がある「基準」か、目安の「指針」かも違います。判定のしかた(1年の平均で見るか、など)も違います。
国・機関ごとの基準の一覧
国や機関ごとの、飲み水のPFASの基準を表にしました。数値はすべて ng/L にそろえています(1 µg/L = 1,000 ng/L)。確認日はすべて2026年10月2日です。「いつから」は、その値を守る(使う)ことになる日です。目標や指針は、公表した日を書いています。
| 国・機関 | 対象の物質 | 数値(ng/L) | 位置づけ | いつから | 出典 |
|---|---|---|---|---|---|
| 日本 | PFOSとPFOAの合計 | 50 | 守る義務がある基準(水質基準) | 2026年4月1日 | 環境省(省令の公布)・環境省(概要) |
| アメリカ | PFOS、PFOA(それぞれ) | 各4.0 | 守る義務がある基準(MCL)。1年の平均で判定。健康上の目標値(MCLG)は0 | 2029年4月26日までに守る(2031年に延ばす案あり) | EPA(規則)・EPA(概要) |
| アメリカ | PFHxS、PFNA、HFPO-DA(それぞれ) | 各10 | 2024年に決定。2026年5月に取り消す案が出ている(未決定) | 2029年4月26日までに守る(取り消し案あり) | EPA(取り消し案) |
| EU | 決められた20種類の合計 | 100 | 守る義務がある基準 | 2026年1月12日 | EU指令 2020/2184・欧州委員会 |
| EU | PFAS全体の合計 | 500 | 守る義務がある基準。20種類の合計とどちらを使うかは各国が選ぶ | 2026年1月12日 | EU指令 2020/2184 |
| ドイツ | 20種類の合計 | 100 | 守る義務がある基準 | 2026年1月12日 | 飲料水令 別表2 |
| ドイツ | PFOA、PFNA、PFHxS、PFOSの合計 | 20 | 守る義務がある基準 | 2028年1月12日 | 飲料水令 別表2 |
| デンマーク | PFOA、PFOS、PFNA、PFHxSの合計 | 2 | 守る義務がある基準 | — | デンマーク環境保護庁 |
| スウェーデン | PFOA、PFNA、PFOS、PFHxSの合計 | 4 | 守る義務がある基準 | 2026年1月1日 | スウェーデン食品庁 |
| オランダ | 20種類の合計 | 100(法律)/4.4(助言) | 法律の基準は100。国立公衆衛生環境研究所は、PFOAに換算して4.4を目安として助言 | — | オランダ国立公衆衛生環境研究所 |
| カナダ | 決められた25種類の合計 | 30 | 目標(守る義務はない) | 2024年に公表 | カナダ保健省 |
| オーストラリア | PFOS/PFOA/PFHxS/PFBS(それぞれ) | 8/200/30/1,000 | 健康をもとにした指針 | 2025年6月25日に公表 | オーストラリア国立保健医療研究評議会 |
| イギリス(イングランド・ウェールズ) | 決められた48種類(それぞれと合計) | 10・100(段階の区切り) | 法律の基準はない。飲料水監督局の指針で、水道会社は従う | 2025年3月改定 | イギリス飲料水監督局 |
| WHO(世界保健機関) | — | 正式な値はなし | 2022年に「PFOS・PFOAそれぞれ100」の案を出したが、決めていない。いまはPFAS全体を見直し中 | — | WHO |
日本の川や地下水には、水道水とは別に「指針値」(PFOSとPFOAの合計で50 ng/L)があります。こちらは飲み水の基準ではありません(環境省)。
アメリカの基準は、いまどうなっているか
2024年に決まった「PFOSとPFOAそれぞれ4.0 ng/L」は、2026年10月2日の時点でも有効です。EPAが2024年4月10日に発表し、4月26日に官報(Federal Register)に載りました。守る期限は2029年4月26日です。
アメリカ環境保護庁(EPA)は、2026年5月18日に2つの案を発表しました。どちらも5月20日に官報に載っています(期限を延ばす案・取り消す案。EPAの説明:期限を延ばす案・取り消す案)。
- PFOSとPFOAの期限を、申し出た水道は2031年4月まで延ばす案
- PFHxS、PFNA、HFPO-DA(GenX)などの基準を取り消す案
意見の募集は2026年7月20日に終わりました。どちらも案の段階で、まだ決まっていません。PFOSとPFOAの4.0 ng/Lそのものは変えない方針です(EPA 2025年5月14日の発表)。
アメリカの基準は、1年の平均の値で守れているかを判定します(EPA)。
国によって基準が違う理由
基準が違う主な理由は4つです。どの健康への影響をもとにしたか、測る技術などの現実をどこまで考えたか、体重や飲む量などの前提、対象にする物質の数です。
日本の50 ng/Lの決め方
日本の基準は、次の計算で決められました(環境省)。
- 一生とり続けても健康への悪い影響がないと考えられる1日の量(TDI、耐容一日摂取量):体重1kgあたり20ナノグラム(食品安全委員会、2024年)
- 体重50kgの人が、水を1日2リットル、一生飲むと考える
- 水からとる分を、全体の10%までにする
計算すると、PFOSとPFOAはそれぞれ50 ng/Lになります。そのうえで、より安全側に考えて、2つの合計で50 ng/Lにしています。
環境省の資料には、WHOの考え方では水からとる割合を20%とすることが多く、その場合は100 ng/Lになる、という説明もあります(環境省 Q&A)。
アメリカの4 ng/Lの決め方
EPAは、PFOSとPFOAを「人にがんを起こす可能性が高い」と位置づけました。そのため、健康上の目標値(MCLG)は0にしています。
守る義務がある4.0 ng/Lは、実際に測ったり、水をきれいにしたりできるかを考えて決めた値です(EPA(規則))。
ほかの国や機関
- WHOの2022年の案(それぞれ100 ng/L)は、健康をもとにした値ではないとWHO自身が説明しています。世界の多くの国で実現できるかを考えた値でした(WHO)。
- オーストラリアは、物質ごとに、もとにした健康への影響が違います(PFOAはがん、PFOSは骨髄、PFHxSとPFBSは甲状腺への影響の可能性。どれも動物実験から)(オーストラリア国立保健医療研究評議会)。
- カナダは、一つひとつの物質の影響がまだ分かっていないことから、25種類をまとめて合計で見る方法をとっています(カナダ保健省)。
- スウェーデンは、欧州食品安全機関(EFSA)が2020年に示した4種類の値をもとにしています(スウェーデン食品庁)。
WHOは、これまで各国などが出した値は何桁も違い、もとにする影響や評価のしかたについて、科学的な考えがまだ一つにまとまっていない、と説明しています(WHO)。
日本の水道の検査結果を、海外の基準に当てはめると
国の調査で検査結果がある水道局など3,080か所の最新の値を、仮にアメリカの基準に当てはめると、少なくとも239か所が超えます。日本の基準(合計50 ng/L)を超えたのは5か所です。
つまり、アメリカの基準を超える239か所のうち234か所は、日本の基準は超えていません。
計算のしかた
もとにしたのは、環境省・国土交通省の調査です(水道におけるPFOS及びPFOAに関するフォローアップ調査の結果、2025年12月25日公表)。水道局などごとに、いちばん新しい年度(2022〜2025年度)のいちばん高い値を使いました。
この調査では、PFOSとPFOAの合計の値だけが公表されています。PFOSとPFOAそれぞれの値は分かりません。そこで、次のように判定しました。
- 合計が8を超える:PFOSかPFOAの少なくとも一方が4を超えるので、アメリカの基準を「超える」
- 合計が4を超えて8以下:どちらかが4を超えるかどうか分からないので「判定できない」
- 合計が4以下:どちらも4以下なので「超えない」
- 測っても見つからないくらい少ない(定量下限未満):下限の値が公表されていないので「判定できない」
ほかの国の基準は、PFOSとPFOA以外の物質もふくめた合計です。この調査にはほかの物質の値がないので、合計が基準を超えた場合だけ「超える」とし、それ以外は「判定できない」としました。
| 当てはめた基準 | 超える | 判定できない | 超えない |
|---|---|---|---|
| 日本(PFOSとPFOAの合計50) | 5 | — | 3,075 |
| アメリカ(PFOS、PFOAそれぞれ4) | 239 | 2,702 | 139 |
| デンマーク(4種類の合計2) | 449 | 2,631 | — |
| ドイツ 2028年から(4種類の合計20) | 62 | 3,018 | — |
単位は「か所」です。日本の基準の「超えない」には、測っても見つからないくらい少ないところをふくみます。
この数字を読むときの注意
- 1年でいちばん高い値で比べています。 アメリカは1年の平均で判定するので、同じ水でも、平均で見ると超えない場合があります。
- 浄水場で処理する前の水(原水)だけを測ったところもふくみます。 アメリカの基準を超える239か所のうち、43か所は原水だけの値です。
- 判定できないところが多くあります。 アメリカの基準では2,702か所、デンマークの基準では2,631か所は、この調査のデータだけでは判定できません。
- 海外の基準は、その国の水道に向けて決められたものです。日本の水道に守る義務があるのは、日本の基準です。
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